起業して一定度、メンバーを集めて軌道に乗り始めると、社内の仕組み作りを考えなければならない段階が必ず来る。
いま、経営者の方で組織作りに頭を悩ませている人も多いと思う。
僕なりに様々な企業を見ながら、組織作りのお手伝いも複数させていただいてきた中で、組織作りの観点で考えていることを書いてみたい。
社員の立場にとっては仕事量が少ないほど時給が高い
まず、大前提として世の中の会社員(雇用されている従業員)の立場においては、やる仕事の量に関わらず会社から給与が毎月振り込まれるという、これ以上ない贅沢な制度があるという話をする。
特に日本においては、会社の立場として従業員を解雇できない(社員の立場が強すぎる)ということが弊害?社員にとっては利益?となり、「一度入社さえしてしまえば、仕事をしなくてもずっと給与をもらうことができる」という構造が存在する。
ここはあくまでも構造上の話なので極端な例だが、例えば社員Aさんが同じ等級の他の社員の人たちの8割の仕事量しかやらなかったとしても、等級が同じであるためベース給与は同じとなる。
言い換えれば、社員にとっては会社から求められる最低限の仕事さえやっていれば、あるいは極力余計な仕事をしないほうが、時給が高いという構造なのである。
当たり前のようだがかなり大前提の考え方として重要になる。
フラクタルにおいては特殊で、1つ1つの仕事に対して費用がついている。
なので構造上は、フラクタルの仕事をすればするほど、給与が高くなるという仕組みになっている。
よほど酷い仕事でなければ、それぞれのメンバーにとっては「あの仕事も、この仕事もしよう」と思う動機が働く構造になっている(はずである)。
これはメンバーそれぞれがフラクタルと雇用契約ではなく業務委託契約をベースとしているため、仕事量をコントロールできるというスーパーメリットがもたらすインセンティブ(動機)である。
正社員の場合は、仕事をすればするほど時給が下がる。
フラクタルのような業務委託契約をベースとした関わりの場合は、仕事をすればするほど稼げる。
同じ量の仕事をするのであれば、当然、後者が良いと考える人が多い。
もちろん関わる人にとっての動機は「〇〇をしたい/得たい」以外にも「〇〇をしたくない/ゆるっと関わりたい」などなど人それぞれの温度感があるから、多様なケースを想定しているしフラクタルはそういう組織でありたい。
現実的にはもちろん、中長期的なキャリアや安定、ワークライフバランスなどなど色々な要素が加味されるので、一概にお金だけでは測ることはできないが、1つお金を軸に考えると、構造的には上のようになるのだ。
上はあくまでも1つの例であるが、あらゆるコミュニケーションと仕組み作りにおいて、取り組みと利益が一致するように意識をしていく。
あらゆる仕組み作りにおいて利益相反をなくす
いやいや、そうは言っても、それはフラクタルが業務委託で構成されているからであって、多くの企業には当てはまらないでしょ。と仰るあなた、そんなことはない。
例えば多くの企業に当てはまるような「これぞまさに利益相反!」と思えるようなケースをザッと思いつく限り挙げてみる。
・自分自身は半期で営業目標を達成できるような行動計画をしていたところ「チームのために」と言われて受注を前倒した結果、半期の業績は未達となってしまった
・採用人事担当から協力依頼をされて、自拠点(もしくは他部署、など)の採用に時間を割いているが何の見返りもない
・「経営者意識を持て」と言われて社内外の勉強会に参加しているが、目的がよく分からないし正直全く興味がない
・社内イベントや飲み会に半強制的な参加を求められるが、本音では面倒だと思っているし他の人も大半がそうだろう
・仕事ができる人に仕事が集まってきてしまう。あの人はうまく面倒な仕事を避けているのに・・
・中間に落ちたボールを拾う人がいないので、総務(コーポレート)やアドミ、アシスタントに仕事が振られてくる
・「売上を作っている人がいちばん偉い」という風潮があり、フロントは何をしても許される
・管理職として全く違う領域の担当を任された。数年間の我慢だから適当にやり過ごそう
・「確認をお願いします」と言われたが、丸投げ状態になっており、最後に触った人の責任になってしまう
・「どんどん挑戦せよ」と言われて新しいことにトライしたら、失敗して責任を取らされ出世が遠のく
・会社のMVVと、現場での判断が常に異なるし、上司によってバラバラ。。どのように考えて行動すれば良いかわからず、結局は全てをエスカレーションしなければならず手間になっている
・過去に一度接点を持っただけの営業担当が「この企業は自分の担当だから」と主張され、別で良い機会が生まれそうなのに話が全く進まない
・合理的に物事を進めようと調整をしたが、最後はいつも声の大きい人の意見が通っている
etc..
社内で起きる問題の大半は、人間関係の問題か、仕組みの利益相反のいずれかによって引き起こされる。
組織や仕組みを作る際は、もちろん関わる人たちそれぞれの意見や背景を汲むことは大切だが、何よりも利益相反にならないように注意を向けていく必要がある。
100%納得する仕組み作りというのはないし、もちろん正解もない。法律ですら正解がなく、世界は今でも争っているのだから。
その中で自社にとっての最適解を模索する過程において、1つの軸として何らかのヒントになれば幸いである。